
東京都江戸川区瑞江の隠れ家的な場所に今年2023年1月4日、ギターサロンがオープンしました。ギターをに興味のある方々が連日訪れています。私自身はギターは弾かないのですが、オーナーの山上高之さんとはフラメンコつながりで、初心者の頃たくさんの素敵なアーティストやアルバムを教えていただきました。今回は取材と称してオープンのお祝いも兼ねてお邪魔してまいりました。
現在までのお仕事について
ーー山上さんは私の印象ではお仕事されていていて、フラメンコギターを趣味で弾いていると捉えていますが、お仕事は何をされていたのですか?
サラリーマンです。最初の仕事は若い時にテレビ局で5年ほど勤務していたのですが、その後転職して現在の2022年4月まで会社員として40年近く勤務しました。
ーー何度かの転勤や、スペインにも行かれていたようですが、全部お仕事ですか?
スペインは完全にプライベートです。当時は半月以上の休暇に対して時代的に会社も随分と困惑してましたけどね。(笑)
海外出張が多くとにかく忙しかった青年期
ーーほかにも海外に結構行かれていると見受けられますが・・・?
30〜40代の後半までの頃は出張で海外には随分いきました。当時はこれから環境問題に取り組まなければいけないと言う時代の頃で、日本では経費削減しながら環境に貢献し業務効率を向上する方法というのがまだ一般的ではなかったんですね。スウェーデンに行って環境の取り組み内容を視察したり、フィランドに行ってどのような補助金制度が出ているかを考察したり・・・。
あとは燃料や機械などの耐久性等々を確認するためにアメリカやヨーロッパ各地、そして会社がアジアに進出するときは、各国の下見や打ち合わせ会議のために中国各地と、ベトナムやフィリピン、タイなどアジアにも幾度となく行きました。まだベトナムが経済成長過程の時代だった頃です。
さらに日本の少子化時代の始まりも懸念し、外国人の受け入れシステムに伴う法的なシステムを考えたり、もう休む暇がなかったですね。30歳前には家を建てていて子供も誕生したということもあり、必死で働きましたね。様々な人脈と社会背景の巡り合わせもよく、上昇の波に乗れたと思われるサラリーマン時代でした。定年の60歳で退職するつもりだったのですが、ありがたいことに継続要請もあり退職できず63歳を終えたときに退職しました。
ギターを弾くようになったきっかけ

ーーギターはいつから弾いていたのでしょうか?
一番最初は中学生から初めて、当時吉田拓郎さんなどフォークソングの時代で、なぜ始めたかと言われると動機は不純でギターを弾けたら女の子にモテるかな?と思ったからなんですよ(笑)
それから20歳ぐらいまでは弾いていました。
20代後半に家庭を持ち30代からは仕事と家の往復と、娘たちの相手などではギターを弾いている時間はなかったので、40歳過ぎぐらいまではまったくギターも弾かず終いでした。ギターは4〜5本ぐらいしかもっていなかったです。
ーーえ?弾かないけど4〜5本持っていたんですか?ごく一般的には1〜2本かと・・・?
えっ?そうですか?(笑)
よしや楽器さんとの出会いがフラメンコの出会い
ーーたしか出張だけではなく転勤もされてますよね?
約40年の間に2回単身で転勤してます。30代後半から単身赴任で京都に11年行って、東京に戻って、また大阪に5年ぐらい行って、トータルすると単身赴任の期間が15〜6年あるんですよ。40代前半の頃に京都で、単身赴任をしてるときに少しずつまたギターを弾き始めました。
ーーホセ タナカさん1のお父さんにフラメンコギターを習ったと以前お聞きしましたが、その時ですか?

そうです。習ったというわけではなく、京都のよしや楽器さんに休日に遊びに行ったときに店内でちょっとだけ教えてもらったという感じです。単身時代の京都というのはもう私にとっては異国の地に来たような感覚で、共通するものが音楽やギターしか無かったので、ギター屋さんを探して「よしや楽器」さんを見つけたんです。マニアックなお店なんですけどね、当時弾いていたアコースティックギターを調整してもらうために行ってたのですが、店主の田中さんが弾くフラメンコギターの奏法を見て衝撃を受けて、アコースティクギターからフラメンコギターに興味が移行しちゃいまして(笑)、そのうち毎週土曜日になるとよしや楽器さんに行くようになっていました。

フラメンコギターの弾き方を教えてもらったり、コンパスの意味を教えてもらったり、フラメンコ関係の本やCDをもらったり、店主の故田中さんには本当にお世話になりました。
そして、店主の田中さんからあるときに、ホセ タナカさんのCDをもらって、1曲目のタンゴを聴いたときにすごい衝撃で、「これを絶対弾きたい」と、言ったら、最初は「絶対無理だ」(笑)と言われたのですが、それでも「絶対弾きたい!」と言ったら、京都在住のフラメンコギターの先生を紹介してくれたんです。衝撃を受けたCDのホセ タナカさんは実の息子さんだというのも随分後から知ったんですよ(笑)
40歳を過ぎてからフラメンコギターを習う
そして京都在住のフラメンコの先生に習うことになったんですが、見て覚えろ的な感じでしたね(笑)。あるとき、「火曜の夕方会社抜けられるか?ギター持って京都駅の近くのスタジオに来なさい。」と言われて行ってみたらバイレの練習スタジオで「コードはこの3つだけ弾け。」と言われまして、音楽のリズム的にはわかるけど、足がどうとかは全然わからない。「わからないです。」といったんだけど「いいから続けてとにかく弾け。」と。でも帰り際に曲種によるコードやコンパスを教えてもらったり、弾いてるビデオを録らせてもらったりしました。教えるより習得という感じでした。
そうしているうちに曲種についてもだんだん理解できてきました。でも40代後半ぐらいのときに東京に戻ることになって、また忙しくて2年ぐらい何もできず、このままじゃ何もかも忘れてしまうと焦りを感じて、フラメンコのギターショップを探しました。見つけたのがプリメラギター社で、チコ吉田さんに瀬田先生を紹介してもらいました。グループレッスンを重ね、踊りの伴奏も少しできるようになって発表会にに出て弾けるようになって2年が過ぎたころ、また50代前半で単身で大阪に行くことになったんです。それでもしばらくは大阪からの帰省時に通ってましたがそうそう続けられないですよね。
また東京に戻って来れたときは 55歳ぐらいで、また始めようと今度は池川先生のところに行きました。池川フラメンコ教室も現在ほど大規模では無くて生徒さんも30人前後ぐらいの頃です。しかし、年に2〜3度ぐらい「発表会出てよ」と言われた時に自分でソロ曲作って、コンパスが正しいかどうかなどの確認をしにレッスンにいくような感じで、そこはちょっと違うねとか、そこはこう弾いた方がカッコいいよとアドバイスをいただいたり、その時だけの臨時レッスン生徒で発表会の当日を迎えていました。
サロンのオープンに至ったきっかけは?

カステラとコーヒーとANGEL GUITARの名刺
ーー突然サロンをオープンされたのでびっくりしましたが、以前から計画していたんですか?
東京に戻って来れた時すでに55歳ぐらいになっていて、5年後ぐらいに定年を迎えたらサラリーマンを引退して路面店を借りてギターショップを10年限定でやろうと思っていたんです。ところが60歳を迎えると会社からプロジェクトの要請があり継続契約を余儀なくされ、定年退職も夢半ばでいたところ、コロナが始まってしまって、町中から人が消えましたよね?かわりにインターネットや通信販売のあり方などマーケットの在り方や人の意識も変わって来たこともあり路面店構想からサロンをやるという発想が出てきたんです。
ちょうどそのころに現在の場所が建築中だったので、路面店で家賃を払い続けた場合の無駄と、自己の資産価値含めて精査して賃貸ではなく自己所有を決定しました。事業届けや中古販売古物道具商など警察の許可も必要なことから調査をして法律的な観も確認クリアしてそこから着手し始めました。そして2022年の2月に入ってそこからサロンの内装改修の工事に着手しました。
ーーこのギターは全部買い取ったのですか?
買い取ったというより自分の持ち物が増えて行ったことがそもそものスタートです。でもオープンを決めてから仕入れたものではなく4〜5本だったギターも気がついたら30本ぐらいになっていて、それでも、当時はいつかは好きなギターで小さな店を始めたいとずっと思っていたので、そこから 少し買い付けようと、さらに7〜8年お小遣い範囲でギターを買い足していったんです。
オープンを決めた時既に在庫は今と同じぐらいありました。これだけではなくて別の部屋のほうにもまだあります。
ギターの品揃えについて
ーー扱っているのは主にクラシックとフラメンコですか?
そうです。主な扱いはクラシック、フラメンコです。そのほかにはジャズ、アコースティックなどもあります。エレキも若干ありますが数本です。
大きなガラス張りの壁面側は全部クラシック、

ラメボードの壁面側はフラメンコです 。

ーー楽器屋さんで買ったわけではないですよね?
楽器屋で買ったものもあれば、海外で購入したものや、製作依頼したものもあります。それぞれの壁面の上段は製作家が作ったものです。様々な製作家に直接メールで「こういうものない?」と尋ねたり、中間バイヤーに「こんなギターができないか?」と聞いてみたり。そこから「できるよ」とか「できたよ」と連絡をもらって進めて行った感じですね・・・。
製作家は大量生産ではないので注文して半年後とか数年後というのが当たり前なんです。でも、そういうのはサラリーマン時代にもずっと好きだったので楽しみながら依頼もしていました。
上段は中国のGuo Yulongと言う製作家のもので9本とり揃えています。クラシックギターが好きな人だったら大体知っています。
元々いつから集めたとかではないですね。仮に資金が何千万もあってこれ全部くださいと言ったところで普通の工場生産のものなら仕入れることも可能かもしれませんが、製作家のものは欲しくてもバックオーダーが数年とか、たまたま1本あるだけなど、時間や時々のタイミングもあるんです。
製作家の人は在庫があったとしても、売りたくない人には売らないとか、大なり小なりあるんですね。スペインは特にありますね。
ーー価値がわかる人にしか売らないということですか?
そういうことです。例えばスペインのお店に行って、「いいのない?」と言うと「これなんかいいよ」と出してくれるけど「これは嫌だ」というと、買う気があるのか、どのくらい弾けるのかを見て、お前だったらこっちの方がいいだろうとか、奥の方から出してくるんですね。人を見て売るというのが結構多いですね。上手い下手よりも、好きか嫌いか、購入に真剣か真剣じゃないかで判断している感じがありますね。奥のスペースに仕舞うのは盗難などの防犯上も兼ねてだと思います。
観光のついでに買いに来た人と違うか、とりあえず欲しいんですけれどもと言われてもあんまり高くなくていい音するギターと言われても、じゃあこのぐらいでいいじゃない?となるでしょうね。
ーーそうでしょうね。
そうこうしているうちに気付いた時に60本から70本になっていましたね。
ーーちなみにお値段はどのぐらいなんですか?
これから始める方や初心者の方向けだと下段で、だいたい5万から10万ぐらい。最初はわからなくても弾けるようになってくるとちょっとグレードアップして次のモノが欲しくなりますよね?
中級思考の方々やお財布事情を踏まえて中段のものが20万から50万、あとはもうかなりこだわりのある方向となる上段が50万円前後です。もちろんそれ以上の価格帯のものもあります。
陳列しているのはそんなに高いものではなく奥の方にそれ以上のものや、アントニオ・レイが置いて行ったギターとか、沖仁さんが使用していたギターなどもあります。
ーーすごいですね!
ところで、そのスタンドに立ててあるのは、みなさんが遊びに来た時に弾いてくださいというギターですか?
これ違います。僕のです。今は亡き製作家の貴重で素晴らしいギターです。

ディスプレイしておくには温度、湿度の管理が欠かせない
ディスプレイのギターはものすごく高価なものではありません。ギターをディスプレイするのは意外と管理するのが難しいんですね。乾燥すると時には木が割れてしまったりします。保管方法はいろいろあるのですが、例えば悪い例でいうと弦を張りっぱなしにして、夏になって膨張して、冬になって乾燥して、などを繰り返すと良くないですね。弦には張力があるのでギター本体には45〜60kgぐらい加重がかかるんですね。ノーマルチューニングで体重ぐらいの張力がかかって乾燥してくると縮まって、雨が降ると膨張してパキンと行ってしまうので1.5度とか2度くらい緩めた状態で、気温は20度前後、湿度も50%ぐらいを保っています。

楽器はデリケートなので湿度によって音も変わるんですよね。
ーー変わりますね。
乾燥していると響きの良い乾いた音が出ますけど、梅雨時期はじとっとした音になる傾向があります。だいたい50〜60%、人間が過ごしやすい湿度が一番いいんですね。人間もカサカサが始まるのは40%以下でひび割れしてくる、そういう意味ではギターも人間と一緒です。

温度は20〜23℃ぐらい。とはいえそれをずっと保つのは結構大変なんですよ。
高価なギターはケースに入れて保管しています。
ーーあとは弦などの備品ですか?
そうです。
そうそう、このカポタスト女性のギタリストに人気なんですね。
ーーアクセサリー売り場のようですね。バンスクリップみたい。そりゃあ人気でしょうね!スペインで調達したものですか?
スペインのコルドバに注文したものと、セビージャのポスティーゴで現地購入したものがあります。

ホームページも基本的な内容は自分で作りました

ーーサロンのホームページも作られたんですよね?
そうです。サイトの仕組みは業者に頼んだとしても、ギターの内容など部位を含めてなど意味がわからないだろうし、写真も1500枚ぐらい撮影していることから、逆に説明して作成してもらう方が大変なので 内容に関しては全部自分で作りました。
今は店舗のホームページはPCモバイル両方のページを含めてインターネット販売に関しては、金融機関代行の審査が通らないんですね。
ーーそうですよね。今はほとんどPCよりモバイルから見る人が多いじゃないでしょうか?
そうそう、最初の入口はほとんどモバイルですね。大体スマホから見て、もっとよく見たいというときにパソコンでみますよね。
ギターを弾きながら楽しめるコミュニティサロンに
ーーどんなサロンにしていきたいですか?
ギターを販売してますがあまり商売としては考えていないです。道楽です。お茶を飲んで楽しみながらやっていきたいなと思っています。
ーーサロン名の由来とかありますか?
サロン名についてもとくにこだわりなくって、なんとなく幸せな感じがするエンジェルのイメージと、あとは全然ギターと関係ありませんが大谷翔平さんがエンゼルスで活躍しているからとか(笑)。
ーーレッスンなどもやっているんですか?
レッスンや、ライブ配信用に作ったスペースもあることにはありますが、現在は準備中で、在庫が置いてある状態です。
ある意味終活も兼ねてですから、商売はあまり考えずギターを弾きながら楽しめるコミュニティサロンにしたいと言う思いですね。理念とかコンセプトとかは特にないですし、来て戴いたみんなが楽しんでくれればいいなと思っています。
ーーありがとうございました。
(2023/1/17)
サロンについてもっと詳しく知りたい、取り扱いのギターを詳しく知りたいという方はこちらをご覧ください。ANGEL GUITAR(エンジェルギター)公式HP :https://www.angelguitar.shop/
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