本題の前に、このブログのタイトルについてですが「人々の物語」という意味で、最初は”Cada Historia”というタイトルにしていました。
2記事目を投稿する前に、ブログの趣旨を説明した上「スペイン語の使い方、これであってますか?」と、私自身が習っている踊りの先生、Benito Garcia(べニート・ガルシア)氏に相談したところ、「うーん、ちょっと違う」と、提案してくださったのが現在のタイトル“ALGUNAS HISTORIAS”です。
そして、それがきっかけで、このインタビューにも応じていただくことになりました。
ということで、今回は、コロナパンデミックが始まって3年め、未曾有の出来事にも屈せず、0からオンラインシステムを構築し、ノンストップで配信し続けたBeni先生。現在では海外の受講者もいらっしゃるというオンラインレッスン構築の背景について、お話を伺ってみました。

2020年コロナ対策の始まり
もともとこのスタジオはインフルエンザなどの感染対策はかなり慎重でした。今回も、2020年1月早い時期に、検温、消毒の徹底、ご自身やご家族の調子が悪い方は来ないでくださいと、呼びかけがありました。
2020年3月、スペインでのBeni先生のクルシージョ(短期講習)の開催が予定されており、帰省も兼ねて一旦出発されました。出発時点では、スペインの感染拡大はまだなかった状況でしたが、到着したころに急拡大。クルシージョは中止して早めに日本に帰国され、コロナ対策が始まりました。
オンラインレッスンのスタートは自宅から
ーレッスン休校と同時にオンラインレッスンへの移行がされましたが、これだけのシステムができるまでに、相当、試行錯誤されて、かなり労力も費用もかかったのではないですか?
かかってますよー(笑)
まず、自宅で配信に使ったこの部屋は、もともと、本当は、この部屋には、いとこのバイオリニストが来る予定で、彼のために可愛くてかっこいい部屋にしていたんだけど、コロナのために来られなくなってしまったので、配信に使うことにしました。床をクッションマットにしてまずは、クローゼットを壊して、カメラを置いてみたけれど、私の顔しか映らなかった。

それで、広角レンズを買って部屋全部が映るようになった。その時点でまず、8万円ぐらい。
この自宅からの配信の時点でカメラとシステムだけで70万位かかってる。鏡も買って、音が外に出ないように防音の壁材を貼ったり。

なんでここまでかけようかと思ったかと言うと、スペイン風邪を知っていたから。
この時点で、これは2~3年かかるだろうというのはすぐに予測できた。
オンライン配信もLINEじゃ無理、 Zoomだと自分の家が出るのが嫌だという人が多いと思ったのと、Zoomは音が遅れたり、電波が悪いと固まるのでイヤになってしまう人もいるだろうと思った。
YouTubeは映像はきれいだけど、音より映像のほうが遅くなるのでどうやって生徒さん達に配信したらいいのか、悩みました。
実際、後から見ると外れていないんだけど生中継の時だけが問題。
でも、これを2年間続けなきゃいけないと思うと、きちんとやるべきだと思った。
音楽関係のプロの方に、“OBS”というのを使うと映像と音を合わせることができると教えてもらった。送る時に0.何秒遅れて送ると映像と音が合うようになるということがわかって、OBS のソフトを使うために、その使い方が説明された1時間半以上のビデオを18個ほどずっと見て勉強しました。
※OBS(Open Broadcaster Software):https://obsproject.com/ja
パソコンを自作し始めた理由
ーパソコンも自作していましたよね?趣味だとおっしゃっていましたが・・・?
そう、実は、OBSを使うのに新しい問題が出てきて、外からのビデオじゃないとダメなの。まず、パソコンにこれをどうやってつけるかというのが問題だった。1台で直接つけるとだと映像でない。外からのグラフィックボードを見つけてUSBで接続してなきゃいけない、でもそうするとMacが古かったのもあって熱くなって遅れる。なのでWindowsを使おうかと考えるとまたそのシステムを作るためにまた、25万~30万、40万かるので、今度はパソコンを作ることを学び始めたの。それでいろいろなカメラが付けられるようになった。それでも、ケーブルの問題、グラフィックボードの問題いろいろ問題を抱えて、毎日夜の3時に寝て朝6時に起きてた。
ー大変だったんですね!
大変だった。でも楽しかった。
靴を使わないでみんながどうやったら練習できるか、6時に起きてどういう流れで何を教えてあげようか、レッスンと同じ時間に生配信にしたのは、毎週その時間は空いてるはずだから、その時に配信するしかないと思った。
でも、ストレスもすごかったので、これが終わってから業者呼んで、全部部屋を改装した(笑)
ーご自宅の配信設備を考えるのと並行して、スタジオのほうも考えていたんですよね?
その時点ではまだ考えてなかった。だいたい、ここから出られるのかどうか自体がわからなかったから、もしかしたら行けるかもしれないと思った時、スタジオの方を始めた。

今度はカメラの置き場所、最初は斜め後ろにしようと思ったけれども、何人かクラスに戻ってきたときに邪魔になるし、スペイン人は前からでもいいけど、日本人は多分、後ろから見た方ができる、と考えると、カメラは最初1台だったけど、これだけだとわからない人が出てくるのでもう1台追加した。これがそれぞれ13万ぐらい。
ー現在、カメラ後ろと横の2台と、前についているのはWEBカメラですね。
そう、で、次ははモニターの場所、パソコンが部屋の中だと気になるし、可愛くないし、フラメンコっぽくないし、最初はスタジオの中だったけど、受付側に置くことにして、そうするとUSBケーブルもHDMIケーブルも10m必要なので繋げてつくって、OBS のソフトにカメラの切り替えを設定して、1を押すと1つめ、2を押すと2つめの後ろのカメラ、3を押すと自分で作った横から後ろからのカメラ切り替えができるようにして設定しました。
ー小スタジオにもモニタとスマートフォンがありますが・・・
(※普段レッスンを行なっている大スタジオと、練習用の小スタジオがあります)
たくさん人が来た時に、密になって入れなくなるので、小スタジオの方にもモニターをつけた。
ただ、カメラはありすぎるとトラブルが多くなりそうだから、長持ちするシステムがどっちかと考えるとカメラは3台つけると熱くなったりするので、2台までかなという結果になった。
グラフィックボードも今はビットコインのの影響で高くなっているけど、壊れることも想定して、高くなる前に2万ぐらいを3台買っておいたけど、よかった!今はもう8万ぐらいになっている。
配信システム構築とアーティスト活動
ー外部のシステムに詳しい人に相談したりとかはしていないんですか?
してないです。全部0から作りました。
ーオンライン発表会のときにパソコンが動かなくなってしまった時、「あとで見ましょうね」と言っていた詳しそうな方がいましたが・・・?
彼は音響の人で、娘と一緒に出たムービーで音響をやっていた人。発表会の音響もやりますよということだったのでお願いしました。
ー「アートにエールを」ですね!あの作品、素晴らしかったですよね!
※アートにエールを:https://cheerforart.jp/
※この作品は後日、アカデミー賞前哨戦「ロサンゼルス国際短編映画祭」にノミネートされています。
ーモデルもやりましたよね。高級バッグ”bestaan.japan”の東京駅のポスター!
あれはね、外国人のかっこいい男とやんちゃな男とおじさん系の男を探してるということでね。
ーどれだったんでしょうか(笑)
「やんちゃな男」はセルバンテスがいたのでね、それではないな(笑)
やりたいですか?と言われてチャレンジしたいなと思ったからやったけど、実際思った以上のものだった。楽しかった。
プロのモデルさんがいて「あなたどこの事務所ですか?」と言われてびっくりした。
コロナのせいで外国人は来なかったので、モデルさんを探すのも大変だったみたい。
出典:https://www.instagram.com/bestaan.japan/
ーでも、一方ではシステムの構築をして、同時に全く違うアーティストモードのお仕事というのは気持ちの切り替えが大変そうですが・・・
そりゃもう、すごいエネルギー使いますよ。
朝起きてこの空間にいる中で、その後で同じ日に全く別の空間に入らなきゃいけない、
で、同じ日に別の人と会わなきゃいけない、結構大変ですよ。楽しかったけど(笑)
ーオンラインレッスンは一時期海外から受講されてる方がいらっしゃったと聞いていましたが、今も継続されているんですか?
フランスの方、アメリカの方、アルゼンチンの方のプライベートレッスンは自宅からやってました。あと外国に住んでいる日本人もいたんです。プライベートレッスンはその人のレベルに合わせるから・・・ 15分ぐらいのビデオで短い振り付け、部分、部分で足だけとか、ブラソ(腕)だけとか、ちょっとしたポイントをビデオで送って、返信してもらう、アドバイスしてあげるという形でやってた。
今もYouTubeから見てくれてる。ただ、時差があるので、YouTubeはほとんどは後からみているようだけど・・・スペインの方も何人かいます。
1日中、スタジオにいる時より仕事してた。1日4時間から5時間クラスやってて、OBSの勉強して、時間が足りないから3~4時間ぐらいしか寝てなかったな。それでちょっと腰を痛めてしまった。
クラスに来ていても、復習のためにビデオが欲しい人もいると思うので、残す方法も考えて、YouTube がいいなと思ったけど、そこにも問題があって、音楽をつけるとブラックアウトしてしまうということ。ただ、最近わかったのがメンバーシップになっていると、注意はくるけど、生中継でブラックアウトしないみたい。
ものによって問題が違って、この会社は、この曲に関してはこれとこれをやってほしくない、ある会社はこれを日本でしか聴かせないとか・・・制約がいろいろある。そのパターンがわかると使える曲が増えてくるけど、ブラックアウトするとその分切って載せなきゃならなくなるので、そこが今、問題。
違うシステムに移行しようと、Fit by Wixに行けば、今のBANDとYou Tubeが一緒になった感じで使えるし、その人の欲しがる物に細かく合わせられるんだけど、今のところバグなどで難しい。
でも、Fit by Wixはどんどん進化しているのでそろそろできるんじゃないかな。
今、スタジオに併設しているフラメンコ用品のショップ”Cordobes”で使っているPaypayも、お店、レストラン以外はダメという制約があるけど、Fit by Wixにすれば、全部一個のシステムで使えるようになる。今はカードだけだけど、コンビニ払いなどもできるようになる予定なので便利になる。
でもね、大変だったけど、チャンスだったんですよ。
0からでもできるんだということがわかったから。
ここに入って、このソフトがあって、これを見ればわかる。あとは覚えるだけ。
これも生徒さんが辞めずにいてくれたおかげです。

クラス以外の無料の動画もたくさんあります。有料クラスは“メンバーになる”ボタンをクリックすると金額と詳しい説明が見られます。
新しい舞台へ/魂を揺さぶるフラメンコ、香りたつスペインの風
ーそういえば、11月に久々に舞台を予定されているとか
そう、北区の企画ですが、11月27日、JR王子駅前の「北とぴあ」で、音楽がメインのライブをプロデュースします!音楽は耳で聴くものだけど、目では踊りを楽しむというコンセプトで、今、もう舞踊団も練習始めてます。

場所:北とぴあ つつじホール
フラメンコギター、カンテ(歌)、バイオリン、パーカッション、パルマ(手拍子)、サパテアード(靴音)が音楽を奏で、バイレ(踊り)が音楽を描く、音楽メインの舞台。
チケットは8/1よりこちらで発売されています。
ーどんな世界が繰り広げられるのか、楽しみです!今日はお忙しい中ありがとうございました。
(2022/07/20)
スペイン、コルドバ出身、赤羽にあるべニート・ガルシア・フラメンコ・アカデミーの主宰でもあり、
現役のフラメンコダンサー、アーティストでもあり、先生でもあるBenito Garcia 氏(べニート・ガルシア)氏について、もっと知りたい!という方はプロフィールページをじっくりとご覧下さい。
>>プロフィールページへ

べニート・ガルシア・フラメンコ・アカデミー
〒150-0044 東京都北区赤羽2-53-3 山本ビル1F
TEL :03-6276-8787
URL : https://www.bgflamenco.com/
コメント
詳細なレポート興味深く拝見しました。コストも掛かるし、体力、根気も必要な作業なのですね。知らない事ばかりでした。
誰にでも出来ることでは無いですね。情熱が体を動かしてくれるんでしょう!
貴重な記事をありがとうございました。また、楽しみにしております。
田沢さん、
しっかりとお読みいただきありがとうございます!
まさに、「情熱が体を動かす」
おっしゃるとおりだと思います。
次回の記事は9月になりますが、よろしければまた見てくださいね!